水草の健全な育成のノウハウやアクアリウムのメカニズムについて思いをめぐらす時、私は断定的なことをお伝えすることの出来ない自分自身にもどかしさを覚えることがよくあります。一言で言うとアクアリウムの世界には、まだまだ解明されきれていない不確かなことがあまりにも多過ぎるのです。

その際たるものに『バクテリア』の存在が挙げられます。

アクアリウムにバクテリアの働きが不可欠であるということは、今やアクアリストならご存知でない方はおられないと思います。でもそのバクテリアの正体をその目で確認された方は、果たして何人いらっしゃるのでしょうか。私たちアクアリトが良く耳にするバクテリアの種類に『ニトロソモナス』や『ニトロバクター』があります。これらのバクテリアは水槽内の汚れを分解してくれる有益なバクテリアとして、本やカタログなどでたまに写真入りで紹介されていることがあります。ところがこれらのバクテリアは1ミクロン以下のサイズであり、最新の電子顕微鏡でも生きた状態で見ることが出来ないとあるメーカーさんから聞いたことがあります。もしそのことが事実ならば、過去に見た覚えのあるあの写真に写っていたものは一体何の写真だったのでしょうか?

おまけに水槽内にはニトロソモナスやニトロバクター以外にも有用なバクテリアの存在が無数にあり、さらにバクテリアと呼ばれる微生物よりももう少しサイズの大きい原生動物も飼育水の浄化に重要な働きをしているとも言われています。

仮に目の前に2台の水槽が並んでいて、全く同じ環境で同じ魚を飼育していたとしても、それぞれの水槽内で働いている微生物の構成はひとつとして同じものは存在しないとも言われています。バクテリアは地球上には無数に存在していて、陸上だけではなく海中にも数多く存在し、将来どんな新種の大発見があるかも分からない、まだまだ発展途上の分野です。それだけに現状では分からないことが多い不確かなしろものなのです。

ところが私たちのアクアリウムの世界は、この分かったようでよく分からない、正体不明のバクテリアというものに依存しなければ成り立たたないというところに深い悩みがあるのです。

確かにここ数年の間にも各メーカーさんのご努力により、バクテリア関連の商品は飛躍的な発展をとげ、水槽の立ち上げに要する時間も短くなりました。コケの発生源である有機物を分解するタイプのバクテリアも発売され、実際当店でも売れ筋商品になっています。それでもメーカーさんの営業の方とお会いして色々と質問してみますと、自社製品のことはさすがによくご存知なのですが、他社商品の話題に話が及ぶととたんに寡黙になられます。そしてコケを食べてくれるバクテリアや、水換えをしなくても水質を維持してくれるバクテリアの発売は現状では不可能だと言われます。

アクアリウムの世界は日々進化してはいるのですが、その足取りは非常にゆっくりしています。そして決して確立されたものではなく、まだまだ進化の途上だということです。今当たり前だと思われている事柄が、実は何十年か先にはとんでもない間違いだったと分かる時代が来ないとも限りません。

定期的にしなければならない水換え作業は楽しいですか?コケ掃除は面白いですか?私は正直言って好きではありません。私はいつの日にかきっとこれらの作業の煩わしさから、すべてのアクアリストが開放される日が必ず来ると信じています。まだ見ぬ新種のバクテリアの登場に私は密かに期待をしているのです。

今ネット上でもアクアリウムに関する情報は大量に流されています。でもそれらの中身は必ずしも正しいものばかりとは限りません。なぜならバクテリアという最も根源的な部分でさえ、まだまだ研究途上の分野であり、その不確かさの事実そのものを認識されていない方がアクアリストの中には大勢いらっしゃるからです。

知れば知るほど、やればやる程分からないことが見えてくる。

だからこそアクアリウムは面白いのです。

熱帯魚を買ってきて新たに水槽に入れる時にする作業のことを「水合わせ」と呼びます。

アクアリストの方なら誰もが経験する、酸素詰めにされたポリ袋のまま水槽に浮かべて、しばらく待ってから魚を放すという、あの作業のことです。そんなこといちいち聞かなくても分かっているという方もおられるとは思いますが、この「水合わせ」という作業、考えてみると実はなかなか奥の深いものなのです。

 「水合わせ」には、大きく分けて二つの目的があります。

最初にポリ袋のまま水槽に浮かべておくのは、水温の急変による魚のショックを和らげるためです。

この作業は約10~15分も浮かべておけば十分目的は達せられます。たまにお客様から、「1時間以上浮かべておいたら大丈夫だよね。」と尋ねられたりするのですが、この作業は水温を同じにすることが目的ですので「1時間以上浮かべておくことが別に悪いことではありませんが、15分も浮かべておけば十分ですよ。それよりももっと大切なことがあります。水温合わせが済んでもいきなり魚を水槽に放さないでくださいね。」とお答えする場面がよくあります。

 そうなのです。もう一つの目的である、水質を徐々に馴染ませるという作業が、実はとても重要な部分なのです。

水温だけを馴染ませていきなり魚を水槽の中に放すと、場合によっては急激な水質の変化に順応しきれず、大切な魚たちが大きなダメージを受けて、一週間以内に全滅ということが起こり得ます。このような現象を「水合わせの失敗」と言います。もっと厳密に言えば「PHショック」であったり、「硬度ショック」といういうことになるのですが、いずれにせよ後の祭りです。何故このような事体が起こるのかと言うと、魚たちは水質が徐々に変化する分にはそれなりに順応出来るのですが、急変には非常に弱いという面を持っているからです。

 水質を徐々に馴染ませる具体的な方法には、いくつかのパターンがあります。最も一般的で簡単な方法は、水槽に浮かべてあったポリ袋を開封し、水槽の水をポリ袋ですくうようにして少量ずつ入れては休みの動作を繰り返し、袋の中に水が一杯になった時点で魚だけをアミですくい出して移動させる方法です。この作業をする上で気になることが、2点あります。ポリ袋の中に水槽の水を入れ始めて、魚を水槽に放すまでに要する時間はどれ位が理想なのか。もう一つはポリ袋の水ごと一緒に魚を移動してはいけないのかという点です。

時間をたっぷりかけさえすれば、例えば2時間も3時間もかけて馴染ませてあげればそれで良いのかと言うと、決してそう言うわけではないと私は考えています。狭苦しい場所にいつまでも閉じ込められているよりも、早くゆったり泳げる新しい環境に移して欲しいと魚たちはきっと願っているに違いありません。おまけにエアーレーションをせずに長時間かけて「水合わせ」をしていると、下手をすれば酸欠で死なせてしまうことにもなりかねません。普通は5~10分もかければ十分です。

 また、もともと魚と一緒にポリ袋に入れられている熱帯魚店の水は、家に持ち帰るまでの時間によっては魚たちの排斥物によって汚れていることが考えられます。したがって、厳密に考えれば入れない方が良いということにはなるのですが、水槽が小さい場合など、水合わせしてたら水槽の水が半分位に減ってしまったなんてこともあり得るわけです。後から水道水を足していたら、結果的にはまた新たなストレスを魚たちに与えることになってしまいます。

それではどんな方法で「水合わせ」をするのが理想的なのか?次回は、水質の指標の一つであるPH値と総硬度の話を織り交ぜながら考えていきたいと思います。

魚たちに出来るだけストレスを与えずに「水合わせ」するには一体どのようにするのが理想的なのでしょうか。

必要以上に時間をかけて、水温合わせをしたり水質を馴染ます作業をする前に、実はもっと大切なことがあるのです。それはあなたの水槽の水質が、今まさに移そうとしている魚たちにとって許容範囲内であるのかどうかということをチェックするということです。そしてもし大幅に外れているようであれば、自身の手で水質をコントロールしてから「水合わせ」を開始するということが重要なのです。

そのためには、まずあなたの水槽の水質を試薬等を使って調べてみる必要があります。

水質にはPH値、硬度、導電率等多くの指標がありますが、「水合わせ」において重要な指標はPH値と総硬度(GH)の値です。

本来、水温と水質が全く同じ水同士の魚の移動は、網ですくってパッと入れるだけでも問題は起こりません。しかし全く同じ水質の水というのは、そうそうあるものではないのです。水質は、水槽内に使用している底砂やろ材の種類、水草の有無や流木や岩などの飾り物によっても微妙に影響を受けています。仮にあなたが複数の水槽を持っていたとしても、どれ一つとして全く同じ水質の水槽は存在しません。だからこそ少々面倒な「水合わせ」という作業が必要になるのです。

あなたは熱帯魚店で何種類かの魚を購入された時、水槽毎に別々のポリ袋に入れられて、かさ張って驚かれたことはありませんか?何で持ちやすいようにコンパクトに包んでくれないの?と不満を感じられたことは有りませんか?「水合わせ」の重要性を知った時、初めてなるほどと納得されるのではないでしょうか。

理想的な「水合わせ」をする場合、まず最も大切な水質の指標は、酸性かアルカリ性かを示すPH値です。魚は種類によってPH値の許容範囲が異なります。大抵の小型熱帯魚はPH値が6.0から6.8くらいの弱酸性の水質を好みます。PH値は市販の試薬かデジタル式のPHメーターなどで簡単に測定出来ますので、水合わせの際にはぜひ水槽のPH値をチェックして頂くことをお勧めします。

 その際、魚が入っているポリ袋の水のPH値と水槽のPH値の差が1以内であれば、ポリ袋の中に少量ずつ水槽の水を足していき、5分位かけて袋の中の水が水槽の水で一杯になったところを見計らい、魚だけをすくい出して水槽の中へ放ってあげれば結構です。

魚種にもよるのですが、もしあなたの水槽のPH値が中性(PH7.0)を超えていた場合は、市販のPH降下剤を使用してPH値を6.5前後に調節してから「水合わせ」を始めるのが無難です。逆に低すぎた場合は、少量の水換えをしてPH値を上げてから始めてください。ここで気をつけて頂きたいことは、ほとんどのプロショップの水はPH値が低いという点です。場合によってはPH5.0以下の場合もあり得ます。ここでは詳しくは触れませんが、熱帯魚店は訳があって意識的にPH値を低く設定している場合が多いのです。

次に硬度の問題について触れてみたいと思います。京都の水道水をテトラ社のGHテスト試薬を使用して測定してみると2°dhという値を示します。この数値は、日本全国各地域によって大きく異なります。

 魚種によってはこの硬度の急変に非常に弱いものがあります。ディスカス、アロワナ、グッピー、エンゼルフィッシュ、エイ、ダトニオ、アピスト、レッドビーシュリンプ等がそれにあたります。これらの魚は、厳密には硬度も調節してから「水合わせ」を始める方がより安全なのです。基本的には、硬度の高い水から低い水へ移動さす場合が危険で、逆に低い水から高い水への移動は比較的魚への負担が軽いと考えられます。もしポリ袋に入っているショップの水の硬度を調べてみたところ、非常に高い数値を示している場合に限り、あなたの水槽の水質もある程度コントロールしてから「水合わせ」を行なう必要があります。

 総硬度(GH)2°dhの水質をそれ以下に下げる作業はとても難しいのですが、逆に上げる分にはとても簡単な作業で済みます。このことはマニアの方の間でもあまり知られていないことなのですが、総硬度を上げるには「人工海水の素」を入れれば良いのです。ほんの少し「人工海水の素」を入れるだけで総硬度は簡単に上昇します。

こうして長々とお話してみると、「水合わせ」ってそんなにややこしいものだったっけと思われるかも知れませんね。

でも誤解しないで聞いてください。

ほとんどの魚は、よほどのことがない限り簡単な「水合わせ」さえすれば、ショック死にまで至ることはありません。しかし私達プロショップには、大切なお客様に健康で丈夫な魚をお届けする使命があります。少しの手間隙を惜しんで魚の状態を悪くするよりも、メカニズムを理解したうえで、手をかけ過ぎるぐらいで丁度良いのだと私は考えています。

最近レッドビーシュリンプの飼育が流行し、水質の変化に過敏な彼らのための水合わせの方法が専門書でも解説されているのを見かけます。生体を袋の水ごとバケツなどに移してから、エアーチューブを利用して点滴をするように時間をかけて一滴ずつ水を足していくという方法です。この作業に2時間以上も時間をかけておられる方もいらっしゃるようですが、私は時間が長ければ長いほど良いとは考えていません。

肝心の移すべき水槽の水質がレッドビーシュリンプの好む水質と大きくかけ離れていたのでは何のための水合わせなのか分かりません。まず自分の水槽と袋の中の水の水質を試薬などを用いて把握し、場合によっては自身の手で水質をコントロールした上で、じっくり「水合わせ」を行なって欲しいものです。また点滴による「水合わせ」のときは、エアレーションをしていないと酸欠で死なせてしまう恐れもありますのでご注意ください。

「水合わせ」はまず水質をチェックし、調節してから、ある程度大胆に行なうことが重要だと考えています。

先日、ある熱帯魚店にお邪魔させて頂いたら、「水合わせの仕方」の自作のパンフレットが店内の色んな所に置いてありました。お客様に親切なお店だなぁと、とても好感を覚えました。手にとって読んでみると、まずPHメーターを使用して水質をチェックし、PH調整剤で調整してから水合わせをするように書かれてありました。私の考えと全く同じではあるのですが、何故か微妙な違和感を覚えたのです。

熱帯魚を飼育するには「水合わせ」が必要→「水合わせ」をするにはPHメーターが必要→PHメーターを買うには安いものでも四、五千円、いいものだと一万円は必要・・・

確かにその通りかも知れないけれど、いきなりこれじゃあハードル高いなぁ・・・初めて熱帯魚を飼育してみようと思われたお客様が、このパンフレットを読まれた時、一体どのような反応をされるのだろうか?

そこには内心、葛藤している私がいました。

考えてみると、これまで私は日々の仕事の中で、実に多くのお客様から様々なご質問を受けてきました。

器具の選択から使い方、魚の病気の治し方、繁殖の仕方、水質の問題、コケ対策から水草レイアウトの作り方に至るまで数え上げたらきりがないくらい質問の中身は多岐にわたっています。私なりにその時々は精一杯考えてお答えしているつもりですが、全てのご質問にはたして的確なアドバイスが出来ていることやら・・・・

でも、後日お客様から「店長に教わった通りにしたら上手いこといったよ。」とお声を掛けて頂く場面に出会うこともしばしばあり、そんな時はとても嬉しい気持ちになると同時にそれらの積み重ねが私自身の自信にもつながっています。

今回は、熱帯魚を飼育していく中で最も基本的な事柄であるにもかかわらず、意外にも飼育のマニュアル本などには書かれていないちょっとした飼育のノウハウについてお話ししたいと思います。

アロワナなどの肉食系大型魚などの飼育をこれから始めようとお考えの方には、特にお役に立つ情報です。

よくあるご質問の中に、「アロワナが餌を食べなくなって、底の方でじっとしているんですがどうしたらいいでしょうか?」というものがあります。これだけでは何をどうお答えしてよいのか解りませんよね。でもこの時点で、私の頭の中では一応の答えとその原因が予測されています。念のため私は、どんなシステムでいつ頃から飼育されているのか、ろ材の内容と普段の水換えのサイクル、最近ではいつ頃水換えをされたのか、そしてその後餌はいつ頃与えられたのかをお聞きします。ほとんどのトラブルは、水質に問題が発生している場合がほとんどではあるのですが、必ずそこには原因というものがあるはずです。

トラブルを未然に防ぐためには一体どうしたらいいのでしょうか?水換えをこまめにすればいいのでしょうか?、ろ材をこまめに洗浄すればいいのでしょうか?私の答えはノーです。当店では、必要以上の過剰な水換えはお勧めしておりませんし、頻繁なろ材の洗浄や交換もお勧めしておりません。

 『水換えした直後は、決して餌を与えてはいけない!!』

私がお伝えしたいのは、たったこれだけのことです。このことさえ気をつけていれば、水槽内でのトラブルの発生をどれだけ未然に防ぐことが出来るか分かりません。このことをお客様にお話しすると、ほとんどの方がびっくりしたような顔をされて、そんなことは聞いたことがないとおっしゃいます。

水質を良好に保つためには、ろ過を充実させることが最も重要なことです。ろ過さえしっかり出来ていれば、水換えの頻度は大幅に少なくすることが出来ます。でもろ過が不十分な場合は、どうしても水換えに頼らざるを得ません。実はこの水換えというものの中に、トラブル発生の危険要因が数多くひそんでいるのです。飼育水を良好に保つために重い腰を上げてわざわざ行なう、アクアリストの良心とおぼしきあの水換えという作業は、魚たちにとっては本当に快適なことなのでしょうか?

私は、水換えというものは、魚たちにとっては一時的にストレスを与えるものだと考えています。

そしてバクテリアの世界にも一時的にストレスを与えるものだと考えています。

ただこれらのストレスは、時間さえ経てば軽減されていくものなので、水換えによって以前よりも水質が良くなっていけば何の問題も起こらないし、結果的にはきっと魚たちも喜ぶはずです。

ここで私が問題にしたいのは、魚たちやバクテリアがストレスを受けている間は、決して餌を与えないでいて欲しいということなのです。なぜなら魚たちは消化不良を起こす危険性が高いうえ、バクテリアバランスが不安定な時の餌による汚れは、最も水質を悪化させる要因になるからです。

では一体どの位の時間、餌やりを我慢すればいいのでしょう。それは水換えの分量に比例すると考えて頂きたいと思います。

具体的に言えば、1/3以内の量を換えた場合で、少なくとも12時間以上を一つの目安にして頂ければいいと思います。ろ過槽の掃除をした時などは、2~3日は何も食べさせずに放っておくくらいでいいのです。

先程のアロワナの話に戻ります。なぜアロワナを引き合いに出したかと言いますと、彼らは熱帯魚の中で、自身の体調の好不調の度合いをその仕草の中で、最もストレートに私たちに伝えてくれることが出来る魚だからです。おまけに水質の急変にも過敏に反応する魚だからです。

彼らは水換えの直後でも喜んで餌を食べます。でも気持ちと体調とは別ものなのです。餌を食べてはみたものの、水換え直後のストレスのせいでお腹の中の餌をうまく消化することが出来ません。結果的には、お腹の中に異物が詰まった状態になってしまい、場合によってはそのまま死に至るケースも起こり得るのです。

これらのことは、程度の差こそあれ全ての魚類に当てはまることだと私は考えています。

順調だったはずなのに、ある日突然に魚の様子がおかしいとか、水槽の水が急に白濁してきたとか、水が緑色になってきたという経験をお持ちの方は、きっと大勢いらっしゃるのではないでしょうか?

そのような経験をお持ちの方は、直近にされた水換えの時のことを思い出してみてください。

   ・・・餌はいつ頃与えられましたか?

順調だったはずの水槽の水が、ある日突然に透明感がおちてきて、なんとなく白っぽくどよーんと濁ってしまう。そんな経験をあなたはなさったことがありませんか?

私は毎日お客様から色んなご質問を受けますが、実は飼育水の白濁りに関するご質問は、トップ5に入るのではと思うくらいに多いのです。

何度水換えをしても収まらない。活性炭を入れてみても効果がない等、さんざん手をつくしたけれどもお手上げですとおっしゃられてご相談にお見えになられる方が大勢いらっしゃいます.

あの意味不明な飼育水の白濁りの正体は一体何なんでしょう?

飼育水の白濁りの要因は、大きく分けて二つあります。一つはバクテリアバランスに起因する有機的な白濁り。もう一つは、細かなゴミが浮遊する無機的な白濁りです。そしてその対処法はどちらの要因なのかによって異なります。

ただ現実問題として、私たちが直面する白濁りの原因のほとんどは、前者のバクテリアバランスの崩れによるものが大半であると私は考えています。

この白濁りの正体に迫る前に、逆に調子の良い水槽に見受けられる『ピカピカに光り輝く水』について少し考えてみたいと思います。

真新しい水道水を水槽に入れた直後の透明感と、調子の良い水槽の飼育水の透明感が微妙に異なることをアクアリストの皆さんはご存知ですよね。どちらの水も確かに透明なのですが、照明を当てて良く観察してみるとその違いは歴然としています。調子の良い飼育水は、まるで水飴を溶いたような輝きがあるのです。片や水道水の方は、特別に輝いているとは感じられません。

アクアリストのほとんどの方は、良くこなれた水にはバクテリアが十分に繁殖しているから水が輝いて見えると理解されておられます。確かにその通りなのですが、私が疑問に感じるのはバクテリアが繁殖したら何故光り輝いて見えるのかという点です。

この謎を解くキーワードは、『水の結晶』の形の違いにあるのではないかと私は推測しています。水を凍らして顕微鏡で覗いてみると、まるで「雪印マーク」のような六角形の結晶を見ることが出来るといいます。しかしながらその結晶の形は水によって実にさまざまで、必ずしも美しい六角形ばかりとは限らず、中にはガタガタのものや一本角のような形のものまであるようです。川の上流の水の結晶の形は美しく、下流へと進む程乱れてくるようです。

水は同じ流れの中においても、その姿かたちを変えていくものなのです。そして何よりも驚くことは、都会の水道水の水の結晶の形はガタガタに乱れているという事実です。

このことを水槽の飼育水にあてはめて考えてみると、当初乱れた形であった水道水の水の結晶は、バクテリアの繁殖によって徐々に本来あるべき姿である六角形の美しい姿を取り戻していったのではないかということです。同じ水でもその結晶の形が異なれば光の反射具合も異なり、六角形の結晶を持つ水のほうがきらきら輝いて見えてもおかしくないと考えるのは私だけでしょうか?

話を白濁りの問題に戻します。

飼育水の白濁りの発生には必ず原因があります。ろ過装置が貧弱な状態下での魚の過剰飼育や餌の与え過ぎ。大量の水換え直後の餌の投与やろ過槽の洗いすぎ。ろ材の目詰まりやろ材の寿命。CO2の出し過ぎによるバクテリアの酸欠。エアーレーション不足によるバクテリアの酸欠。魚の大量死によるアンモニア濃度の急上昇等、思いつくだけでも色んなケースが挙げられますが、これらはどれもろ過に有用なバクテリアに大きなダメージを与えます。

バクテリアバランスがひとたび崩れると飼育水の白濁りという現象となって表れる訳なのですが、この白く濁ったように見える物体の正体についてはいくつかの説があります。

ある時は有機栄養バクテリアが増殖した為であったり、またある時は浮遊性バクテリアが増殖した結果、それを食べる原生動物が大繁殖し、その原生動物たちが結果として白濁りとして見えているという説があったりします。また植物性プランクトンの発生が原因であったりもします。

いずれにしろ、その物体が生きてうごめいているのか、死骸となって浮遊しているのかは定かではありませんが、その正体が微生物であるという説が有力です。ただその物体は、時と場合によって出現するものが異なると言う点が最もやっかいなところです。

ここで私は少し想像力を働かせて、こんなことを考えてみたりするのです。

バクテリアがバランスを崩すということは、きっと水の結晶の形にもなんらかの影響があるのではないか。もし結晶の形が崩れてしまっているとしたら、水の中を浮遊する微生物の死骸やゴミがひっかかりやすくなっていても不思議ではない。それらが結果として白濁りに見えているのではないかと・・・

これはあくまでも私の想像であり、事の本質からはひょっとしたらかけ離れているかも知れません。でも、こうして想像力を働かせて考えてみなければならない程、この問題の解明は謎に満ちた難しいものなのです。

お終いに普段私が行なっている、バクテリアバランスの崩れによって発生したと思われる白濁りを解消する『一般的な』方法を簡単にお話します。

餌の投与を停止した状態で1/2の水換えをし、エアーレーションを十分行なった状態で市販のバクテリアを投与し続けます。後はむやみに水換えをせず、有益なバクテリアの回復をひたすら待ち続けます。

いかがでしたか?

あえて『一般的な』とことわりを入れなければならない程、この問題の解決法はケースバイケースであり、アクアリストを永遠に悩まし続ける難解なテーマのひとつなのです。

熱帯魚の飼育スタイルには大きく別けて二つのパターンがあるように思います。

ひとつは犬やネコを飼うのと同じような感覚で熱帯魚をペットとして捉え、その飼育自体を楽しむというスタイルです。このような場合、アロワナをはじめとする肉食系大型魚や大型ナマズ、プレコ、ディスカスなど、やや大きめのサイズの魚がその対象として考えられます。

当然餌を与えたり、水換えをしたりと世話はつきものなのですが、犬に散歩が必要なのと同じように、それらの作業はある意味飼育者にとっては楽しみでもあるわけです。

そしてもう一つは、熱帯魚が泳ぐ水槽をお部屋のインテリアとして楽しむスタイルです。この場合、熱帯魚そのものだけではなく、水草や流木などと調和がとれた形での水槽の存在自体を楽しむというものです。

最近よく売れている水槽のサイズは、かって主流であった60センチのレギュラー水槽ではなく、40センチ以下の小型水槽が主流となっています。当然このようなサイズの水槽には、物理的にも小型魚しか入れられません。したがって現在の飼育スタイルは、前述のペット感覚というよりもインテリア感覚が主流になっていると言えるのではないでしょうか。正直大型魚の売れ行きが、年々減少傾向にあることからもこの傾向は否定出来ないと思います。

インテリアである以上、水槽は常に美しくあって、見る者の心にやすらぎを与えて欲しいと望むのは当然です。ご来客があって水槽の美しさが話題に出たりすると、とても幸せな気分になれるはずです。そして出来ることなら、めんどうな水換え作業やフィルターのメンテナンスなどは、避けて通りたいと考えられる方が大半のはずです。私は日々のお客様との対話の中で、その思いを痛切に感じています。

それにもかかわらず、現状の熱帯魚飼育のメカニズムは、多くのお客様のニーズからは遠く離れたところにあるような気がしてならないのは果たして私だけでしょうか。

現在の飼育技術では、その頻度に差こそあれ、水換え作業は不可欠です。そして見ている者を不快にさせるコケの発生の問題も完全にはクリアされていません。

私は、この二つの問題を少しでも軽減させていくことが、今以上に多くの方にアクアリウムを楽しんで頂くためには必要不可欠な条件だと思っています。またそのために、たゆまぬ研究開発努力を続けることが、メーカーさんを含めて私達業界人の使命だと考えています。

確かに熱帯魚の飼育技術は、ゆっくりしたペースではありますが、少しずつ進歩してはいます。魚が死んで仕方がないのだけれどどうしたら上手く飼えますかというような内容のご質問は、10年前に比べると大幅に減ってきました。熱帯魚飼育には不可欠のバクテリアの概念も浸透してきました。優秀な飼育器具類が、一頃に比べてとても安価になりました。にもかかわらず、アクアリストの人口は決して増えているとは言えないのが偽らざる事実なのです。

ところでインテリア指向のアクアリウムをリードする、水草関連の飼育器具メーカー『アクアデザイン・アマノ(ADA)』さんは、毎年水草の育成技術満載の豪華なカタログを無償で配布してくださって、水草レイアウト水槽の普及に多大な貢献をされている大変たのもしい存在です。

そして毎年『世界水草レイアウトコンテスト』を実施し、マニア心を駆り立てます。主眼はどのようなレイアウトにすれば、美しく見せることが出来るかということに置かれていて、水草の育成技術もさることながら美的センスを競い合うコンテストだと私には思えます。出品された作品は、どれもこれが本当に水槽の中の風景なのかと目を疑わんばかりの美しいものばかりです。

しかしながら主催者側の狙いの中に、熱帯魚業界のパイをもっと大きくしていきたいという主旨があるとすれば、少し的外れなコンテストだと私には思えてなりません。

確かにADAさんは、水草の健全な育成の為にCO2の強制添加が不可欠であることをいち早く提唱され、今や水草育成用底床材の定番となった感のあるアクアソイルも開発されました。しかし一番肝心なろ過に対する考え方に、未だに迷いがあるように思えてなりません。バクテリアがゼロの状態の真新しい水槽に、いきなり水草を植えて、頻繁に水換えを繰り返しながら水質の安定を待つという考え方には、私個人としてはどうしても納得出来ないのです。

作品の飼育データを見てみると必ずと言って良い程、水換えは週に1回1/3、時には週に2回1/3などと平気で記されています。

私はこれを見ると、すーっと興醒めしてしまうのです。

いかに美しい水景であったとしても、それを維持するために多大な手間隙をかけ続けなければならないとしたら、そんな趣味は決して広まるはずがないからです。

これから迎える高齢化社会を考えた時、アクアリウムの趣味は、必ず今まで以上に脚光を浴びる存在になり得るという確信が私の中にはあります。熱帯魚の飼育を楽しむ趣味に年齢制限はありません。定年を迎え人生の余暇を豊かに楽しもうと考えられた時、水槽の中で自然を再現して観賞するアクアリウムという趣味は、幼少の頃のノスタルジアとあいまって、きっとその後の人生をさらに充実したものに彩ってくれるはずです。

時代はすぐそこまで来ているのです。ご高齢の方にバケツリレーの水換え作業をお勧めするなんてナンセンスです。

どのようにすれば手間隙かけず、いかに手軽で簡単に、長期間美しく水槽を維持していけるか。そのことにこそ、もっと私達は探究心を持つ必要があります。

このテーマを常に念頭において、日々研鑽を積み、もっともっとお客様のお役に立てるよう努めていきたいと私は思います。

毎年3月になると「引越しをすることになったのですが、水槽の移動はどのようにすれば上手くいくでしょうか?」というご質問をよく受けます。

今回のTipsでは、この「水槽の引越し」に際して知っておくと役に立つ、いくつかのノウハウをご紹介してみたいと思います。

皆さんはアクアリウムフェアを見に行かれたことがありますか?そこには美しくレイアウトされた大小様々なサイズの水槽が数多く展示されています。アロワナなどの大型魚が悠々と泳ぐ大型水槽もあれば、水草が緻密に植えられた水草レイアウト水槽まで、アクアリストならずともわくわくするような夢の世界がそこにはあります。

しかしそれらの水槽は、その会場で一からレイアウトされたものばかりではありません。プロショップが展示している水草レイアウト水槽などは、事前に何ヶ月もかかって製作されたものが、景観が崩れないように車に載せられて、慎重に会場まで運び込まれてきたものなのです。

まさにこのプロが行なう展示水槽の移動作業の中に、失敗することなく「水槽の引越し」をするためのノウハウが数多く隠されているのです。知っておかれるときっと何かのお役に立つと思います。

多くの場合、展示水槽の移動作業は当日の朝から始められ、その日のうちに会場に運び込まれて復元されます。したがって展示会場までの距離が遠すぎてその日のうちに搬入が不可能と思われるようなケースでは、あまりにも準備がたいそうになることから最初から出展は敬遠されます。関東方面で行なわれるアクアリウムフェアに、関西のプロショップの作品がほとんど展示されないのはこのためです。

それはさておき水槽の移動作業の手順の話を進めます。

最初に水槽内の魚を取り出すと言いたいところですが、当たり前のように水槽内からは生体はあらかじめ別の水槽に移動されています。魚を移動日当日になってから掬い出しているようでは、水草が抜けたり飼育水が濁ってしまったりして作業効率が落ちてしまうからです。しかもそれらの魚たちは2日前から絶食させてあります。これは移動中のナイロン袋の中で魚が糞をして水を汚さないための処置です。

魚はナイロン袋に酸素詰めされた後、新聞紙を敷き詰めた発泡スチロールの箱に収容されます。この時一つのナイロン袋の中にすべての魚を入れるのではなく、複数の袋に小分けにすることによって擦れによるトラブルを予防します。季節によって必要とあらば使い捨てカイロを発泡スチロールの箱の中に入れて保温しながら輸送します。

次に水槽内の飼育水をホースポンプを使って抜きます。ところがここで一番大きな問題に直面するのです。

この水を会場まで持っていくべきかどうか・・・?

この問題は多くのプロショップが悩む問題であると同時に考え方が分かれるところでもあります。

基本的に飼育水は持って行った方が会場での作業はらくになりますし、なによりも水槽の立ち上げがスムーズに行なわれます。出品慣れされているプロショップの中には車の中に大型のポリタンクを常設されていて、水中ポンプを利用して注排水が簡単に出来るように工夫されておられます。

反対に飼育水を一切持っていかない場合は、会場でホースが利用出来ればラッキーなのですが、運が悪ければバケツリレーに頼るしかありません。この場合一番問題になるのは水温です。夏場なら水道水の温度もほどほどに温いのでさほど問題はないのですが、冬場の冷たい水道水を直に水槽に入れるわけにはいきません。この場合、熱湯をポリタンクに入れて持参することによって解決するしか方法がありません。もちろんカルキ抜きのコンディショナーを使用しますが、同時にテトラのアクアセイフを入れておくことが、魚にストレスを与えないためとろ過バクテリアをスムーズに回復させるための重要なポイントとなります。

話は戻りますが、ひたひたまで水が抜かれた水槽は、水草が枯れないように濡れた新聞紙などをかぶせた後、発泡スチロールの板や破片などを利用して出来るだけレイアウトが崩れないように固定されます。もちろん底床材はそのままの状態であり、ほとんどの水草も植わったままです。流木が入ったレイアウトではあらかじめ取り出せるものは取り出しておきます。

60cm以上のサイズの水槽の場合は必ず二人がかりで持ち上げ、あらかじめ用意しておいた水槽の底面よりもやや大き目にカットした厚手のコンパネの上に載せます。このように濡れたままの底床材が入った状態の水槽は想像以上に重く、90cmクラス以上の水槽ともなるとコンパネに載せて持ち運びしない限り、輸送中に水槽が割れてしまう危険性があるのです。

いよいよここからが本題です。大切なろ過器は、どのようにして移動するのがベストなのでしょうか?

展示水槽の場合、水槽は移動後すみやかに立ち上げる必要があります。翌日からは朝から大勢の来場者がお見えになるのですから、飼育水の白濁りなど許されるはずがありません。輝くようなピカピカの水を瞬時に作らなければならないわけです。まさにプロの腕の見せどころと言った場面でもあります。

このピカピカの水は、秘密のコンディショナーを入れて作るわけでは決してありません。もし使用するものがあるとすれば、ろ過バクテリアの回復を促進さすために『BIOスコール』などのバクテリア液の投入とエアーレーションです。まれに底床材を舞い上げてしまって濁りが気になる場合にのみ、細かな浮遊物を大きな粒子にしてフィルターで漉し取る作用をする「白濁り除去剤」を使用することがありますがあまり一般的なやり方とは言えません。

要するに移動日の朝まで稼動していたフィルター内のろ過バクテリアを、いかに最小限のダメージで会場まで運び込んで、いかに素早く元の状態まで回復さすことが出来るかということが最も重要なポイントなのです。

当店のやり方を具体的にお話ししますと、外部式フィルターを移動する場合はまず配管を取り外した後、フィルター内の水をすべて抜き取ります。そしてフィルター内のろ材は取り出さずにそのままの状態で、蓋の部分だけをはずしておきます。さらにフィルター本体をナイロン袋に入れ酸素詰めします。このようにしておけば半日位の輸送でも、ろ過バクテリアのダメージは最小限にくい止めることが可能なのです。短時間の移動であれば酸素詰めまでしなくても、蓋を開けて水を抜いておくだけでも充分です。上部式フィルターの場合も要領は同じことです。

要は蓋を閉めたまま、水も入れたままの状態での移動が最悪の結果をもたらすということを声を大にして言いたいのです。

さて会場に運び込まれた展示水槽は無事に復元され、フィルターも稼動し、飼育水もいくぶん透明感を取り戻してきたところでいよいよ魚の投入という緊迫した場面を迎えます。

さきに述べましたように飼育水の大半を持ち込むことが出来た場合は、通常の「水合わせ」さえ行なえば問題は起こらないのですが、現地の水道水を利用した場合は少しだけ手順が異なります。アクアセイフを使用することはさきに述べましたが、入れる魚がカージナルテトラのような弱酸性の水質を好む種類であればPH調整をしてから「水合わせ」をする必要があります。

 また大型魚やアフリカンシクリッドの場合は「人工海水の素」を使用して、飼育水の硬度を調整しておくこともプロのテクニックとしては欠かせません。

そして最後に重要なことは、魚たちに餌を絶対に与えないということです。このことの理由について詳しくお知りになりたい方は、このコーナーの過去ログ『エサやり厳禁!!水換え後の鉄則!?』をご参照ください。

一般的には引越し専門の運送屋さんは空の水槽の輸送は引き受けてくださいますが、魚が入った状態の水槽の輸送は引き受けてくださいません。少なくとも魚だけは掬い出して、飼育者自身の手で運ぶ必要があるのです。

魚をナイロン袋に入れて輸送する際には、日本動物薬品(株)から発売されている「O2ストーン 携帯用」という酸素の出る石をご利用頂くととても手軽で便利です。

「水槽の引越し」は大変な作業です。でも基本的なポイントさえ押さえておけば、そんなに難しいことではないということがご理解頂けたのではないでしょうか?

一番必要なのは、ちょっとした気力と魚たちへの愛情なのではないでしょうか。

『金魚』という言葉を聞いて、皆さんはどんなイメージを思い浮かべられますか?

夜店の屋台の金魚すくい。風鈴、うちわ、花火などと同じような夏の風物詩・・・。

誰もが子供の頃に一度は飼った経験をお持ちのはずの金魚なのですが、近年観賞魚としてのステータスは決して高くないのではと感じているのは私だけでしょうか?

レッド・プラティやパロット・シクリッドをご覧になって、金魚みたいだからいやというお客様の声を私は何度か耳にしたことがあります。

金魚ってそんなに平凡な生き物なのでしょうか?

金魚の飼育ってそんなにつまらないものなのでしょうか?

ある調査によると日本の約500万世帯あまりの家庭で金魚が飼育されているというデータがあり、この数字は他のどの観賞魚よりも圧倒的に高いものです。

ヒーターなしでも飼育できる手軽さ、身近な親しみやすさ、その可愛らしさが人気の要因だと考えられます。

熱帯魚が主力の当店ではありますが、ここ数年金魚の販売量は徐々に増えてきており、これからの季節は品揃えもぐんと厚みを増してきます。

特に『ピンポンパール』や『パンダ金魚』など、海外で養殖される比較的新しい品種が人気のけん引役となっているような気がします。

今回はそんな観賞魚の原点とも言うべき金魚の歴史をご紹介してみたいと思います。きっと皆さんがこれまで抱いてこられた、金魚に対するイメージが変わること間違いなしです。

1.金魚の祖先

中国の文献の記述によると、今からおよそ1700年前、とある湖で野生のフナの中から突然変異によって体色の赤いヒブナが現れ、これが今日の金魚の祖先であると言われています。

10~12世紀の北宋時代には杭州の西湖畔の仏教寺院の池で飼育され、やがて宮廷でも観賞されるようになりました。しだいに家臣たちの間にも広まり、南宋時代には金魚の飼育や販売を生業とする者も生まれました。

13~16世紀にはそれまで池で飼育していた金魚を陶器の水鉢で飼うようになり、明代には盆魚として水槽飼育が一般に普及し中国の風物詩にもなっていきました。

2.日本への伝来

日本へは今からおよそ500年前に現在の大阪の堺港に渡ってきました。

当時の日本は室町中期、戦乱の時代。そんな時代だからこそ「侘び寂び」といった心の安らぎが金魚に求められたのではないでしょうか。しかしながら当時はまだ養殖技術がなく、数年後には姿を消してしまいました。

その後、元和年間(1615~1623年)に再び中国から渡来してきたものが養殖され、今日の日本金魚の基礎品種となりました。

3.江戸時代の金魚ブーム

江戸時代前期の金魚は、富豪や大名など一部の特権階級の贅沢品の一つでした。

しかし江戸中期以降になると、太平の世の訪れとともに町は活気づき、金魚は江戸文化の流行の一つになりました。

当時は数も少なく高価だった金魚を、いかに効率よく養殖するかが大きな課題でした。

金魚を愛玩魚として飼っていた大名などは、率先して家来に金魚の養殖を奨励しました。仕事にあぶれた武士も副業として金魚の養殖に精を出していました。

またその頃オランダなどからギヤマン(ガラス)製造技術が伝来し、ビードロなどの吹きガラスが流行しました。それらが金魚鉢として利用されるようになり、ますます人気に拍車をかけました。

当時のマスコミの役目をしていた浮世絵・浮世草子・川柳などには金魚がたくさん登場し、江戸の町に一大金魚ブームが沸き起こったことがうかがい知れます。

4.現代金魚の課題

金魚はすべて人為的に作出された改良種です。養殖された仔がすべて親と同じ魚になるとは限りません。生産の手を抜くとたちまち品種が崩れ、先祖返りを起こしてしまうこともあります。

現在日本で養殖されている金魚の品種は、約25種類あまりと言われています。新品種も多数紹介されてはいるのですが、コンスタントに市場に流通されていないのが現状です。

多くの手間と技術を必要とする新品種の作出は、10年以上の歳月がかかる大変な作業なのです。

もう一つ見過ごすことが出来ない点として、最近の金魚の体質が弱くなったと言われる点です。この業界に生きる者として大いに心を痛めている問題の一つです。

いずれにせよ金魚は日本に伝来して以来、それぞれの時代に観賞魚として、世界的に例を見ないくらい永い年数に渡り多くの方に親しまれてきたことはまぎれもない事実です。

そして古来金魚の飼育は,今以上に高いステータスを保持していたことも興味深い点です。

伝統ある金魚を、改めて見直して頂くきっかけになれば幸いです。

2006年10月21日から29日まで、『海遊館』のある大阪の天保山マーケットプレースで『アクアリウムフェア2006』が開催されました。

私はお店の定休日を利用して見学に行ってきました。日本観賞魚振興会が主催する今回のアクアリウムフェアは、関西での開催は今回が初めてというものであり、私自身わくわくしながら行ってはみたのですが、金曜日ということもあってか来場者数が予想以上に少なかったのには少し戸惑いを感じました。

とは言うものの私はこの手のイベントは大好きで、ゆっくりと時間をかけて充分に堪能させて頂きました。入り口近くには、大阪の有力専門店の方が製作された美しい水草レイアウト水槽がずらりと並んでおり、関西地区は関東地区に比べると水草人気が低調だなどという風説を吹き飛ばすかのような力作揃いだと私には思えました。

今回のテーマである『もうひとつの水草水槽』とめぐり逢ったのが実はこのイベント会場でした。

水槽の展示コーナーを取り囲むような形で、いくつかのメーカーさんのブースが設けられていたのですが、それはニッソーさんのブースで私との出逢いをひそかに待っていました。

ZICRAさんの営業の方とお話を終えて隣のブースに足を進めると、なにやら幻想的に光り輝くような水草レイアウト水槽が2台並んでいるではありませんか。私の目はその水槽に釘付けになってしまいました。

今までの水草では有り得ないまばゆいばかりの緑色。そしてその中に可憐に咲くピンク色や紫色や白色の花のような水草。そしてそれらはブルーとレッドをミックスしたエキゾチックな照明を浴びて光り輝くように咲き誇っていたのでした。

美しい・・・素直にそう思いました。

あたりを見回してみてもニッソーさんの営業の方の姿らしきものは見えません。隣のメーカーさんに尋ねてみると「今日はニッソーさん来たはりません。」とのこと。

仕方なく自力でこの水草が何なのか探ることにしました。

商品名は『アクアティック プランツ』といい、前景草から後景草までかなりの種類が揃うイミテーションの水草でした。

今まで色んなメーカーさんから色んなタイプの人工水草が発売されてきましたが、私自身レイアウトに使ってみたいと思えるようなものは一つとしてありませんでした。どれもがいかにも人工物まるだしという感じの物ばかりでした。

ところがここにあるものは、今まで目にしてきた人工水草とは明らかに何かが違う。私にはそう思えました。

もともと密殖レイアウトすることを意識したサイズ展開がなされているようで、特に生の水草では育成が難しい前景用の背の低い水草は種類も豊富でとても良く出来ています。生きた水草では有り得ないようなカラフルな色彩のものも多くあり、しかもかなりリアルな作りになっているではありませんか。ロタラインディカの水上葉につく花の形を模倣したピンク色や紫色のものなどは、かつて永代熱帯魚さんから仕入れていた鉢植え水草の大ヒット商品を彷彿させるものでした。

価格を見てみるとニッソーさんにしては珍しく安い、買い易いこなれた価格設定になっているではありませんか。

これは売れる!このような商品を待ち望んでられるお客様がうちのお店にも絶対にいらっしゃる!私には確信めいたものがありました。

さっそく私は問屋さんにお願いしてこのイミテーションの水草を大量に仕入れました。その時知ったことなのですが、この商品は少し前から発売されていたにもかかわらず、専門店では売れないだろうという問屋さんの勝手な憶測で、ホームセンターなど量販店にしか紹介していなかったのだそうです。そのことを聞くまでは、これから発売される新製品だとばかり思い込んでいた私は改めてニッソーさんのカタログを見て驚きました。確かにすでに最新のカタログに載ってはいるのですが、そこにはあまりにもダサい今までと変わり映えしない普通の人工水草の写真しかなく、この商品の持つ本来の魅力が一つも伝わってこなかったからです。

これでは私も気が付かなかったはずだ・・・

改めて私は『アクアリウムフェア2006』に行って良かったと思い直しました。もし行ってなければこの商品にめぐり逢うチャンスは、永遠に与えられなかったかも知れなかったからです。

それから私は60センチ水槽に黒いバックスクリーンを張り、黒色の底砂を敷き、その水草をレイアウトしてみました。もちろんライトはブルーとレッドの球に入れ替え、フィルターの中にはPカットを入れることも忘れません。生きた水草と違ってレイアウトに要する時間はあっという間です。

自分でもまずまずの作品が出来上がりました。後はお客様の反応を待つだけです。

結果はあっという間に出ました。今までのところは私の予想が的中しているように思えます。特にピンクの花のような小型の商品が良く売れるのですが、中には私が作った水景と同じものを作りたいとおっしゃってくださるお客様まで現れてきました。お求めになるお客様の中には何故かご年配の方や女性の方が多いのも特徴的です。

ところで人工の水草と聞いただけで、毛嫌いされる方が世の中には大勢いらっしゃいます。

ADAの天野社長などは水槽内に人工物を飾ることが大嫌いな方だと聞いています。世界水草レイアウトコンテストに出品する作品の中に、たとえ一つでも人工の水草を忍ばせておこうものなら最下位になることは間違いないでしょう。

当店のお客様からも人工の水草なんか味気ないというお声を頂くことはよくあります。まさに感性の違いというか、人それぞれ好みが違うのは当たり前のことです。

好きなものは好き、嫌いなものは嫌い。それはそれでいいのだと思います。

しかし日頃から生の水草の販売に力を入れている私が、このイミテーションの水草にこんなにまで魅力を感じている理由は、実はもっと他のところにもあるのです。

それはこの水草を上手く利用すれば、やり方によってはメンテナンスに手間をかけなくとも、非常に長期間美しさを維持しやすい水槽が誰にでも簡単に作れるという点です。

水草水槽を作る上で最も神経を使う点は、いかにコケを出さないようにするかということです。その為にろ過設備を充実させたり、水換えをしたりしながらコケとの戦いをしていくわけです。でもたまには疲れてしまうこともあるわけで・・・

癒しを求めて始めたはずの水草水槽が、いつの間にか見るも無残なコケ水槽と化してしまう。これでは、やすらぎなどあったものではありません。

人工の水草だけでレイアウトした水槽では、コケ抑制剤のベストセラー商品、コトブキ工芸の『Pカット』が使えます。この『Pカット』という商品は、ろ過器の中に入れておくだけで亜鉛や銀の成分が徐々に溶け出し、2~3ケ月間コケの発生を完璧に抑制することが出来るすぐれものです。しかも熱帯魚には無害です。ところがこの商品は生きた水草とは全く相性が悪く、アヌビアス・ナナ以外のほとんどの水草を枯らしてしまいます。

でもこれを忘れず定期的に取り替えてさえいけば、水槽のガラス面や水草に見苦しいコケが付く心配が全くなくなり、「快適コケなしライフ」を送ることが可能になるのです。

ただしこの「快適コケなしライフ」を送るには多少のコツが必要で、『MAX35BIO』などの有益なバクテリアの力を利用して、給仕によって生じる有機物等を分解出来るだけの強力なろ過を維持することが重要なポイントです。その為にはエアーレーションを忘れずに取り付けることと餌を与え過ぎないこと。さらに照明の照射時間を10時間以内に抑えることが大切です。いくら強力なコケ抑制剤を使用していても、もともとコケが出やすい環境の中ではその効果も半減してしまうからです。

インテリアとして水槽の中に緑が欲しい。

でも忙しくて手間はかけられないし、出来ればめんどうな水換え作業なんかは極力控えたいとお考えの方にまさにピッタリのシステムが、この『アクアティック プランツ』+『Pカット』による水草レイアウト水槽ではないかと私は思うのです。

もちろん生きた水草には、生命力溢れるすばらしい魅力があることはいうまでもありません。これからも私はずっと水草と向き合って生きていくでしょう。

でも今回ご紹介した『もうひとつの水草水槽』もきっとこれから多くの方に癒しを与え続けてくれるような、そんな予感が私にはしてならないのです。       こんな不思議な空間を演出することも可能です!